ご葬儀の知識

死亡前の高額療養費は還付できる?入院費の精算と還付申請の手順

亡くなる前の入院や治療で医療費がかさんだ場合、「高額療養費」としてあとから一部が戻ってくることがあります。本人がすでに亡くなっていても、遺族が代わりに申請して受け取ることができます。

先に要点をお伝えします。高額療養費は、1か月の医療費の自己負担が年齢・所得ごとの上限額を超えた分が払い戻される制度です。故人の分は、相続人が申請できます。申請先は故人が加入していた健康保険(国民健康保険・後期高齢者医療・会社の健康保険)の窓口です。申請できる期間には時効(2年)があるため、葬儀後の手続きが落ち着いた段階で構いませんが、忘れないうちに動くのが安心です。

なお、2026年8月から自己負担上限額が段階的に引き上げられる制度改正が予定されています。故人の診療月がこの改定の前か後かで、計算に使う上限額が変わる点に注意してください。

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高額療養費制度とは|1か月の医療費に上限がある仕組み

医療機関の窓口で支払う自己負担には、年齢(70歳未満・70歳以上)と所得区分に応じた1か月あたりの上限額が定められています。上限を超えて支払った分は、あとから払い戻されます。これが高額療養費制度です。

同じ医療保険に加入する家族の医療費は合算でき、直近12か月以内に3回以上上限に達すると4回目以降は上限額が下がる「多数回該当」という仕組みもあります。長期入院や、亡くなるまでに転院・再入院を繰り返したケースでは、この多数回該当に該当し、通常より低い上限額が適用されていることもあるため、月ごとの領収書をまとめて確認してみる価値があります。

対象にならない費用がある点に注意

高額療養費の対象になるのは、健康保険が適用される診療費(保険診療分の自己負担)のみです。次のような費用は対象外なので、精算時に金額の見込み違いが起きやすいポイントです。

  • 入院時の食事代(食事療養標準負担額)
  • 差額ベッド代(個室・少人数室を希望した場合の室料差額)
  • 先進医療にかかる技術料
  • おむつ代、パジャマ代などの日用品費

「思ったより還付額が少ない」と感じる場合、入院費の中にこれらの対象外費用が含まれていないか、明細書で確認すると理由が分かることがあります。

「限度額適用認定証」を使っていた場合はすでに精算済みのことも

生前、入院が長引くことが分かっていた場合、「限度額適用認定証」を医療機関へ提示していると、窓口での支払い自体が自己負担上限額までに抑えられます。マイナ保険証(マイナンバーカードの保険証利用)を使っていた場合は、事前の認定証申請がなくても窓口負担が自動的に上限までに調整される仕組みになっています。

つまり、故人が入院中にこの仕組みを使っていた場合、窓口では既に上限額までしか支払っておらず、あらためて高額療養費を申請する必要がないケースもあります。領収書の金額が、上で紹介した上限額とほぼ一致している場合は、その可能性を疑ってみてください。逆に、限度額適用認定証を使わずいったん満額を窓口で支払っていた場合は、差額分がまるまる還付の対象になります。

2026年8月・2027年8月の制度改正で上限額が変わる

高額療養費の自己負担上限額(70歳未満・月額)は、厚生労働省の見直しにより次のように引き上げられます。

標準報酬月額(年収目安) 現行(〜2026年7月) 2026年8月〜
83万円〜(約1,160万円〜) 252,600円+1% 270,300円+1%
53〜79万円(約770〜1,160万円) 167,400円+1% 179,100円+1%
28〜50万円(約370〜770万円) 80,100円+1% 85,800円+1%
〜26万円(〜約370万円) 57,600円 61,500円
住民税非課税 35,400円 36,900円

70歳以上の上限額・外来特例、および2027年8月からのさらなる所得区分細分化についても見直しが予定されています。申請時点でどちらの金額が適用されるかは、亡くなった方の診療月を基準に決まります。制度改正の境目に当たる場合は、加入していた健康保険の窓口で個別に確認してください。

死亡後でも還付を受けられる|請求できるのは相続人

本人が亡くなっていても、相続人が代わりに高額療養費を申請できます。故人が支払った高額な医療費が対象です。入院・治療が長期にわたっていた場合、家族が気づかないまま時効を迎えてしまうこともあるため、亡くなった後の手続きの一つとして必ず確認してください。

高額療養費として戻るお金は、法律上は相続財産に含まれると整理されるのが一般的です。相続人が複数いる場合の受け取り方や、相続放棄を検討している場合の扱いについては、対応が分かれる可能性があるため、判断に迷う場合は税理士・司法書士など専門家に確認するほうが安全です。

還付申請の手順・窓口

申請先

故人が加入していた健康保険の窓口です。

加入していた保険 申請窓口
国民健康保険・後期高齢者医療 お住まいの市区町村の担当窓口
会社の健康保険(協会けんぽ) 協会けんぽの都道府県支部
会社の健康保険(組合健保) 加入していた健康保険組合

必要書類(一般的な例)

  • 高額療養費支給申請書(各保険者の窓口・ウェブサイトで入手)
  • 医療費の領収書(原本またはコピーを求められる場合あり)
  • 故人と申請者の関係が分かる戸籍謄本等
  • 振込先の口座情報(申請者本人名義の口座であることが多い)

窓口や保険者によって必要書類が異なるため、事前に電話で確認してから訪問すると二度手間になりません。

期限(時効)は2年

高額療養費の請求権の消滅時効は、診療を受けた月の翌月1日から2年です。たとえば2026年4月の診療分であれば、時効の起算日は2026年5月1日、申請期限は2028年4月30日となります。この期間内であれば、さかのぼって申請できます。

葬儀や各種手続きに追われて後回しになりがちですが、時効を過ぎると受け取れなくなるため、忘れないよう早めにチェックしておくと安心です。

準確定申告の医療費控除との関係

故人の医療費は、条件を満たせば準確定申告における医療費控除の対象になることがあります。医療費控除の計算では、高額療養費として戻ってきた金額を医療費から差し引く必要がある点に注意してください。準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。

高額療養費の還付を受けるタイミングと準確定申告の期限が近い場合、控除額の計算に影響することがあるため、税理士に相談しながら進めると安心です。

死亡後の手続き全体の流れは「死亡後にやること一覧(期限別チェックリスト)」でも解説しています。

よくある質問

申請しないと還付されませんか?

はい、原則として申請が必要です。健康保険によっては、対象になりそうな方へ案内(お知らせ)が届く場合もありますが、届かないケースもあるため、心当たりがあれば自分から窓口に確認したほうが確実です。

誰が申請できますか?

故人の相続人が申請できます。相続人が複数いる場合は、代表者が申請し、あとで分配することが一般的ですが、詳しい進め方は窓口や専門家に確認してください。

いつまでに申請すればいいですか?

診療を受けた月の翌月1日から2年以内です。葬儀後の手続きが落ち着いてからでも間に合いますが、忘れないうちに手をつけておくことをおすすめします。

入院費の精算と葬儀費用が重なって支払いが心配です。どうすればいいですか?

分割払いや葬儀後のお支払いなど、ご事情に合わせたお支払い方法をご用意しております。費用面がご不安な場合も、まずはお気軽にご相談ください。無理のない方法をご提案いたします。

差額ベッド代や食事代も高額療養費の対象になりますか?

なりません。高額療養費の対象は保険診療分の自己負担のみです。差額ベッド代・食事代・先進医療の技術料などは対象外のため、領収書の内訳を確認するとよいでしょう。

生前に「限度額適用認定証」を使っていました。それでも申請できますか?

限度額適用認定証を使っていた場合、窓口での支払いはすでに上限額までに抑えられているため、原則として追加の還付はありません。ただし、複数の医療機関にかかっていた場合など、世帯合算の対象になる分が別途発生することもあるため、念のため加入していた保険の窓口に確認すると安心です。

亡くなる前の医療費が高額だった場合、高額療養費として遺族(相続人)が還付を受けられます。2026年8月からは自己負担上限額が段階的に引き上げられるため、故人の診療月がどちらの基準になるかを窓口で確認してください。葬儀後に受け取れるお金は「葬儀代の補助金・給付金まとめ」もあわせてご確認ください。

出典:高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省/高額療養費制度の見直しについて|厚生労働省

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