ご葬儀の知識

堺市における「成年後見人」による葬儀手配と死後事務。身寄りがない方の見送りを円滑に進めるための実務ガイド

身寄りのない方や一人暮らしの高齢者を支援している成年後見人にとって、本人が亡くなった後の対応は判断に迷いやすい問題です。
成年後見人は本人の財産管理や身上保護を行いますが、成年後見そのものは本人の死亡によって終了します。しかし、死亡後は一切の対応ができなくなるわけではありません。民法では一定の死後事務について、成年後見人であった方が引き続き対応できる仕組みが設けられています。
ただし、火葬や埋葬に関する契約と、通夜・告別式などの葬儀を主催することは法律上の扱いが異なります。また、身近な親族がいない場合でも、法定相続人が存在することがあります。
そのため、本人が亡くなった後は、成年後見人として何ができるのか、親族や相続人はいるのか、死後事務委任契約は結ばれているのかなどを確認しながら対応する必要があります。
ここでは、成年後見人が本人死亡後にできることとできないこと、葬儀や火葬を進める際の注意点、堺市で利用できる制度、家庭裁判所への報告や財産の引継ぎまで順番にご説明します。
※本記事は、公的機関が公開する情報をもとに、記事内容の正確性に配慮して作成しています。成年後見制度に関する手続きは、個別の状況によって対応が異なる場合があります。詳しい手続きや法的な判断については、家庭裁判所や弁護士・司法書士などの専門家へご確認ください。

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成年後見人の権限は本人の死亡によって原則終了する

成年後見制度は、判断能力が十分でない本人の財産や生活を法律面から支援する制度です。そのため、本人が亡くなると成年後見も終了し、成年後見人が持っていた法定代理権も原則として消滅します。

一方で、本人の死亡と同時にすべての対応を停止すると、相続人へ財産を引き継ぐまでの間に財産を適切に管理できなくなったり、火葬を行えなくなったりする可能性があります。

そこで民法873条の2では、成年後見人であった方が一定の条件のもとで行える死後事務を定めています。(※)

死亡後も一定の死後事務は行うことができる

成年後見人であった方は、相続人が相続財産を管理できるようになるまでの間、相続人の意思に反することが明らかな場合を除き、一定の事務を行うことができます。

代表的なものとして、特定の相続財産を保存するために必要な行為や、弁済期を迎えた債務の支払いがあります。例えば、本人が亡くなる前に利用した医療費や施設利用料、公共料金など、すでに支払期限を迎えている債務については、一定の要件のもとで支払うことができます。

また、火葬または埋葬に関する契約の締結や、相続財産の保存に必要な一定の行為については、家庭裁判所の許可を得ることで行える場合があります。なお、預貯金を払い戻して支払いに充てる行為など、別途家庭裁判所の許可が必要になるものもあるため、具体的な対応は管轄の家庭裁判所へ確認しながら進めることが重要です。

火葬の手配と葬儀を主催することは別

特に注意したいのが、火葬・埋葬と葬儀の違いです。民法873条の2に基づき家庭裁判所の許可を得て行える死後事務には、火葬や埋葬に関する契約が含まれています。納骨についても、火葬・埋葬に準じて家庭裁判所の許可を得て行うことが可能とされています。(※)

一方、通夜や告別式などの葬儀は、この制度による死後事務には含まれません。家庭裁判所も、葬式・葬儀については死後事務許可の対象にならないことを明示しています。したがって、成年後見人であったことだけを根拠として、本人の財産を使って自由に葬儀を執り行えるわけではありません。親族や相続人の状況、本人が生前に残した意思、死後事務委任契約の有無などを確認し、どのような根拠に基づいて手配を行うのかを整理する必要があります。

身寄りがないことと相続人がいないことは同じではない

身寄りがない方の対応では、もう一つ注意したいことがあります。普段連絡を取っている家族がいないことと、法律上の相続人が存在しないことは同じではありません。本人に配偶者や子どもがおらず、両親もすでに亡くなっている場合でも、兄弟姉妹が相続人になることがあります。また、その兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、甥や姪が相続人となる場合があります。

日常生活では身寄りがない方として支援されていても、死亡後に戸籍等を確認すると相続人が判明するケースは考えられます。死亡後の財産を誰へ引き継ぐのかという問題にも関係するため、親族や相続人の状況を確認したうえで対応を進めることが大切です。

死後事務委任契約がある場合は、生前の希望を反映しやすくなる

身寄りのない方が、自分の死後の手続きをあらかじめ第三者へ依頼しておく方法として、死後事務委任契約があります。

ここで重要なのは、成年後見制度と死後事務委任契約は別の仕組みだということです。成年後見人としての権限は本人死亡によって原則終了します。一方、死後事務委任契約は、本人が生前に受任者へ死亡後の事務を委任しておく契約です。

そのため、同じ弁護士や司法書士等が生前の成年後見人と死後事務の受任者を務めていたとしても、死亡後は成年後見人としてではなく、死後事務委任契約に基づいて対応する事務が生じることになります。

死後事務委任契約で決めておけること

死後事務委任契約では、本人の希望に応じて、葬儀や火葬、納骨をはじめとする死亡後のさまざまな手続きについて定めておくことができます。

例えば、葬儀の形式や規模、依頼する葬儀社、宗教・宗派、寺院への連絡、火葬、納骨先や供養方法などです。そのほか、親族や知人への死亡連絡、医療費や施設利用料等の支払い、賃貸住宅や施設の退去、電気・ガス・水道などの解約、家財や遺品の取り扱いについて定めることも考えられます。

ただし、死後事務委任契約と遺言にはそれぞれ役割があります。相続財産そのものを誰に取得させるかといった遺産の承継については、死後事務委任契約だけで完結するものではありません。

本人が身寄りのない状態にある場合には、死後事務だけでなく、遺言や財産の承継方法なども含めて生前に専門家へ相談しておくことが重要です。

被後見人が亡くなったら、まず何を確認する?

本人が亡くなった後は、葬儀社へ連絡することだけでなく、成年後見人としての手続きや権限の確認も必要になります。

まず確認したいのは、親族・相続人の状況と、生前に結ばれた契約です。親族へ連絡できる状態なのか、相続人となる可能性のある方がいるのか、本人が葬儀や納骨について希望を残しているのか、死後事務委任契約や遺言書があるのかを確認します。

そのうえで、成年後見人として行える事務なのか、死後事務委任契約の受任者として行うのか、親族や相続人が手配するのかを整理します。成年後見は本人の死亡によって終了するため、家庭裁判所への死亡の連絡や、後見事務終了に伴う手続きも必要です。

火葬や納骨等について成年後見人であった方が死後事務として対応する必要があり、家庭裁判所の許可が必要な行為に該当する場合には、必要な申立てを行います。

葬儀社へ連絡する際には、成年後見制度が関係している案件であることや、親族・相続人の状況、死後事務委任契約の有無などを伝えておくと、その後の手配を整理しやすくなります。

堺市で葬儀・火葬を行う場合に確認しておきたい制度

身寄りのない方の葬儀や火葬では、本人の財産状況も考慮しながら方法を検討する必要があります。

堺市には堺市立斎場があり、火葬施設と葬儀式場を同じ施設内に備えています。JR阪和線堺市駅から徒歩約5分の場所にあり、市立斎場用の規格葬儀も利用できます。

堺市の規格葬儀

堺市では、市内で葬儀を行う市民を対象に、葬儀内容を検討する際の一つの目安として規格葬儀制度を設けています。2026年8月時点で案内されている基本料金は、堺市立斎場用が40万円と60万円、自宅・集会所用が30万円と50万円で、いずれも税別です。利用する場合は、堺市が指定する規格葬儀取扱店へ直接申し込みます。

規格葬儀だから成年後見人が特別に利用できるわけではありませんが、内容と基本料金があらかじめ示されているため、費用の見通しを立てる際の選択肢になります。なお、規格葬儀の基本料金にすべての費用が含まれるとは限らないため、実際に必要となる総額については葬儀社へ確認しておく必要があります。

生活保護受給者だった場合の葬祭扶助

本人が生活保護を受給していた場合には、生活保護法による葬祭扶助が利用できる可能性があります。ただし、生活保護を受給していた方が亡くなれば、自動的に葬祭扶助が適用されるわけではありません。

生活保護法では、被保護者が死亡し、その葬祭を行う扶養義務者がいない場合や、葬祭を行う扶養義務者がおらず、遺留した金品だけでは必要な葬祭費用を賄えない場合などについて葬祭扶助を規定しています。対象となる費用には、検案、遺体の運搬、火葬・埋葬、納骨その他葬祭に必要なものが含まれます。

利用できるかどうかは個々の状況によって異なるため、該当する可能性がある場合には、葬儀内容を決めて施行した後ではなく、事前に福祉事務所へ相談することが重要です。

堺市国民健康保険の葬祭費

葬祭扶助とは別に、亡くなった方が堺市国民健康保険の被保険者だった場合には、葬祭を行った方に葬祭費が支給される制度があります。

堺市では2026年8月現在、1件につき5万円です。申請には、死亡が確認できる書類のほか、葬儀を行った方の氏名や葬儀を行ったことが確認できる領収書などが必要です。申請期限は葬祭を行った日の翌日から2年です。

ただし、他の健康保険から葬祭費に相当する給付を受けられる場合など、堺市国保から支給されないケースもあります。成年後見人が関係するケースでは、誰が葬祭を行った者に該当するのかも含め、実際の申請可否を堺市へ確認しておくとよいでしょう。

儀や死後事務に関する支出は記録を残しておく

本人死亡後に成年後見人であった方が一定の死後事務を行った場合には、何のために、いくら支出したのか分かるように資料を残しておくことが重要です。

葬儀社から受け取った見積書、請求書、領収書のほか、火葬料金などの支払いを証明できる書類も保管しておきます。特に本人の財産から支出する場合は、成年後見人として行うことができる事務なのか、家庭裁判所の許可が必要なのかを確認したうえで進める必要があります。

家庭裁判所へ提出する書類や報告内容は、事案や手続きによって異なります。必要となる資料を一律に判断せず、管轄の家庭裁判所から案内された内容に従って準備します。支出の根拠を説明できるよう、葬儀や火葬に関する書類はまとめて保管しておくとよいでしょう。

また、葬儀や火葬が終了しても成年後見に関する事務がすべて終わるわけではありません。後見終了時の収支を整理し、家庭裁判所への終了報告を行ったうえで、管理していた財産を相続人等へ引き継ぐ必要があります。相続人がいるか分からない場合や、相続人が財産の受け取りを拒否する場合などには、状況に応じて別途手続きが必要になることがあります。

成年後見人から葬儀社へ伝えておくとスムーズな情報

身寄りのない方の葬儀では、一般的な葬儀とは異なり、親族がすぐに意思決定できるとは限りません。

葬儀社へ相談する際には、故人様の氏名・住所・死亡場所・現在の安置場所といった基本情報に加え、成年後見人が関係していることを伝えておくことが大切です。

親族や相続人の状況、死後事務委任契約の有無、本人が生前に希望していた葬儀や供養の方法、宗教・宗派、納骨先などが分かっている場合には、その内容も共有します。

また、火葬のみを希望するのか、通夜や告別式を行うのか、費用についてどの程度の範囲を想定しているのかも重要です。

葬祭扶助など公的制度を利用する可能性がある場合には、葬儀の契約前にその旨を伝えます。見積書、請求書、領収書について必要な宛名や記載事項がある場合も、あらかじめ葬儀社へ伝えておくと手続きがスムーズです。

身寄りのない方の葬儀は、生前の準備によって大きく変わる

成年後見人の権限は、本人の死亡によって原則として終了します。ただし、本人死亡後もすべての対応ができなくなるわけではなく、民法873条の2に基づいて一定の死後事務を行うことができます。

火葬や埋葬に関する契約など、家庭裁判所の許可を得て対応できる事務がある一方、通夜や告別式などの葬儀そのものは、成年後見人の当然の権限には含まれません。

また、身近に頼れる親族がいない方であっても、法律上の相続人が存在する場合があります。本人が希望する葬儀や供養、納骨などを死亡後に円滑に実現するためには、成年後見制度だけに頼るのではなく、死後事務委任契約や遺言なども含めて生前に準備しておくことが重要です。

堺市には、市営の堺市立斎場があるほか、葬儀の仕様や基本料金の目安を定めた「規格葬儀」の制度があります。また、条件を満たす場合には、生活保護制度の葬祭扶助や国民健康保険の葬祭費などを利用できる可能性があります。

吹公社では、身寄りのない方や成年後見制度が関係する葬儀についても、ご家族・親族の状況や手配できる範囲を確認しながらご相談を承ります。火葬式、一日葬、家族葬など、必要な葬儀の内容と費用を確認したうえで、無理のない方法をご案内します。

まとめ

成年後見人の権限は、本人の死亡によって原則として終了します。ただし、本人が亡くなった後も何もできなくなるわけではなく、一定の死後事務については、法律に基づいて対応できる場合があります。

特に注意したいのは、火葬・埋葬に関する手配と、通夜・告別式などの葬儀を執り行うことでは扱いが異なる点です。本人の死亡後は、親族や相続人の有無、死後事務委任契約の内容などを確認し、必要に応じて家庭裁判所や行政機関と連携しながら進める必要があります。

また、身寄りのない方の場合は、本人が元気なうちに葬儀や納骨、住居の整理などについて希望を残し、死後事務委任契約などで対応する人を決めておくことも大切です。

堺市で葬儀や火葬を行う場合には、堺市立斎場や規格葬儀を利用する方法があり、状況によっては葬祭扶助や国民健康保険の葬祭費などの制度を利用できる可能性もあります。

吹公社では、身寄りのない方や成年後見制度が関係する葬儀についてもご相談を承っています。ご本人の希望や親族の状況、利用できる制度などを確認しながら、必要な葬儀や火葬の方法をご案内いたします。


参考・出典

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